DROEの短所(A) 新規事業投資への判断を誤る!
条件:負債がなく利益が営業利益のみの企業
[例1]資本コスト10%で前期末投下資本1000を使用した今期のROEは15%
新規事業は500の初期投資から12%のROEを得られる
【EVA基準】EVA=(税引き後事業利益/投下資本-資本コスト)×投下資本
既存事業;EVA(50)=(150/1000−0.1)×1000
新規事業;EVA(10)=(60/500−0.1)×500
∴判断=全社的なEVAは50から60に改善するため[採用]
【ROE基準】
全社的ROE(14%)=(150+60)/(1000+500)×100(%)
∴判断=全社的なROEは現状の15%から14%に低下するため[非採用]
[例2] 資本コスト10%で前期末の投下資本1000を使用した今期のROEは6%
新規事業は500の初期投資から8%のROEを得られる
【EVA基準】EVA=(税引き後事業利益/投下資本-資本コスト)×投下資本
既存事業;EVA(−40)=(60/1000−0.1)×1000
新規事業;EVA(−10)=(40/500−0.1)×500
∴判断=全社的なEVAは−40から−50に低下するため[非採用]
【ROE基準】
全社的ROE(6.66%)=(60+40)/(1000+500)×100(%)
∴判断=全社的なROEは現状の6%から6.66%に改善するため[採用]
※ ROEの改善を基準に新規投資の意思決定をすると、
EVA創造事業を却下し、EVA破壊事業を採択してしまう危険性がある。
※ ROEを用いるときは、
資本コストとの比較で判断しなければ誤った評価を下す危険がある。
(B)ROEは資本コストを正しく認識出来ない!
ROE=[ROA+(ROA−有利子負債利子率)]×(1−税率)
「ROEを上げるには、ROAが有利子負債利子率を上回る新規投資を実行すれば良い」
ROE=事業活動(ROA)+財務活動(有利子負債利子率+資本構成)????
ROAは企業資本全体の運用効率を表わすものであり、収益性指標としては重要であるが
利子率を考慮しなければ横断的比較は勿論、時系列比較も出きない欠点がある。
※ EVAを改善する方法のうち、長期的にEVAの向上に貢献し続けられるのは
資本コストを上回る資本効率が期待出来る新規事業に投資する事だけである。
他の方法も
効率性追求には欠かせないが、期待出来る効果は限定されている。
効果的な成長投資の意思決定にはROEではなくEVAが機能すると考えられる。
利益率の高いビジネスは往々にして事業規模が小さく、
ROE向上を目標とすると、縮小均衡に陥る問題がある。
EVAは有効なリストラを可能にする。
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